松山へ
ヤクルトスワローズの青木宣親選手の取材で、松山の坊ちゃんスタジアムへ。といっても宮崎から直行便はなく、福岡で乗り継いで13日昼前に球場に着く。
広報の須藤氏(非常に迫力のある人なのだが、目は優しく、信頼できる相手とは本当の信頼関係を築けそうな、球団にとっては頼もしい広報だろうと思う)より、取材は練習終了後、三塁側ダッグアウトには入ってよい。写真もほぼ自由に撮影可。ただし、飛球には気をつけよ。ということだったので、ダッグアウトで練習を見守る。カメラマンは青木選手を追って仕事する。ぼくはすることがない。
全体練習終了が午後3時。普通は特打、特守がないかぎりはそれで終わるのだが、青木選手の場合はそれからたっぷりウエートに取り組むので、それを待たなくてはならない。通常は3時間くらいやるというのを、1時間半くらいで切り上げて出てきてくれた。
この人の成績は、野球ファンならご存じの通りだが、一応概略を。
2003 デビュー。イースタンリーグ首位打者、盗塁2位、最高出塁率、フレッシュオールスターMVP
2004 セ・リーグ首位打者(.344)、史上二人目のシーズン200安打、ベストナイン
2005 オールスターMVP、192安打、盗塁王、出塁率.396、ベストナイン、ゴールデングラブ賞
早稲田からプロ入りしたとたんに、とてつもない活躍。今年は安打数こそ前年より10本少なかったものの、本塁打、四球が大幅に増え、出塁率も上昇、WBCの世界一にも貢献した。しかも、まだまだ伸び盛りの気配である。会って話をしてみると、どこまでいってしまうのかはかりしれない可能性を感じた。真摯で、誠実だけど、どこかお茶目でもある。深いところまで見通しているのだろうけれど、それを口にしない賢さもある。だから自分の言葉にとらわれることもない。
ただ、取材開始時、坊ちゃんスタジアムは夕暮れも近く、急速に気温が下がり始めていた。一日動いて、ウエートをやって、シャワーを浴び、アイシングもすませ、出てきてくれたアスリートを取材するには条件が厳しすぎた。それが気になって、早く終わらせることを考えてしまった。二度目のない取材者として、これでいいのかどうかわからない。ただ、ぼくらの取材はやはり相手あってのものだろうと思う。
気心を通わせることもできず、相手にこちらが抱いている関心を察してもらうこともなく、ただ、普通の取材をしてしまった。少し後悔もあるが、これでいいのだという気もする。
カメラマン芥川仁氏のコメント。
「トスバッティングでね、インパクトの瞬間だけ、目から火を吹くみたいな集中だった。インパクトに向かって、同じ調子で集中が高まるのではなくて、ある時点から急激にぐわっと目に力がこもる。あの目を見てるだけで球の位置がわかるくらいだった。」
そう。そして振り抜いた後に、弓道の残心のような充実した静寂に戻ることにも、ぼくは気づいていた。単純なトスバッティングだけで、ここまで際だっていると、その先に、その向こうに何があるのか知りたい気持ちになるのだが、語ってはくれなかった。技術論は話さないようにしているらしい。なんという賢明さだろうと思う。

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