理想のキス竿
ひさしぶりに釣りに出たものだから、またもや道具熱に火がついた。というわけではなくて、なんと手持ちのキス竿を2本、リールごと現場に置き忘れてしまったのだった。美しい思い出と引き換えだからいいのだけど、一本はぼくが理想のキス竿と思っていたものだった。
シマノの小継海煌2ー240。ごくたまにしか行かないにしても、手こぎゴムボート釣り歴20年のワタシが、「浅いきれいな砂地でキスを釣るなら」という前提つきで、理想にして究極とほれていた竿なのだった。これ、実は中山手勉さんの愛用竿でもある。
しょせんは手こぎゴムボートなどという砂まみれ、海水まみれ、汗まみれ、餌まみれのヤブレカブレ状況の中で使う竿なので、あまり凝ったり高すぎたりするのも心持ちがよくない。これは、造り、価格とも安すぎず、高すぎずでちょうどよかったのだ。
オモリ負荷は5号~10号となっているけれど、ボートからちょいと投げて流すなら7号でも重すぎる。5号で投げるときれいに竿がしなって、オモリは音もなく海中に没するという感じで、実に気持ちのいい竿だった。ちょっとした深場で、真下に落としてコヅくような釣りなら10号でも確かに使えそうだけど、そんな釣りはしないし、10号では何もこの竿でなくてもよい。しかもその5号は、六角オモリではだめで、どうしてもナス型オモリでなくてはならない。着水音が全然ちがう。テンビンは、福山克義さんが開発したT-28だ。ちょい投げをやるのに、こんなにシンプルで使いやすいテンビンはない。
ぼくのキス釣り場というのは、水深3mからせいぜい10m。主に岸から見て水の色が段をつけて変る5~7mあたりをうろうろするというのが多いから、オモリは軽ければ軽いほどよい。きれいな砂地という前提は、根がかりが心配になるような石まじりの底だと、ちょっと心もとないということ。
この竿は、純度の高いカーボンロッドなのだけれど、柔らかくてよくしなるので、キスの食い込みがとても良い。パーンとはじくようなアタリが多発する時は、もうどうしたって人間の技術では追いつかないわけで、アタリをとってアワセることなんてできはしない。そんな日にかぎれば、普通の調子の竿で1尾釣る間に、ほんとに3尾くらい釣れてしまう。そう、この竿は、キスを勝手に釣ってくれる竿だったのだ。
以前、流星号さんと一緒に釣っていた時、バスロッドを流用するぼくを尻目に、チヌ竿1号くらいの3mほどの竿で、隣でがんがん釣られた。その時は、ほんとに三倍ほどの差がついた。竿の差なのだ。その竿にたどりついた経験の差といってもよい。3mと長いのも、手前船頭で船を操作する彼にとっては、それが最適な長さということなのだろう。
そういう経緯の果てにたどりついた海煌であったので、さっそく買い直そうと調べてみると、なんということか現在、2号は2.7m以上からしかラインナップされていない。シマノは、あの2.4mという理想のキス竿を捨ててしまっていたのだ。まったくなっていないぞ。ほんとは手こぎボートでは2.1mくらいがジャストなのであって、いくらなんでも2.7mではあんまり長いのではないか。しかも色が変って値上げまでしている。
いいつつ、やはり注文してしまった。
大体、普通に「キス竿」といえば何を指すのか。これは地域によって、ものすごくばらつきがあるんだろうと思う。ぼくにとってキス竿とは、一日釣ってもほとんど根がかりのないきれいな浅い砂地で、水深6m、オモリ5号、少し遠目に投げてボートを流すと、23cm~28cmのキスが時にダブルで釣れて、あわわわと楽しい、というような状況で最適な竿のことなのだ。
小継海煌2-240。いい竿だったけどなあ。

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