新居昭乃さんのこと
新居昭乃さんには、ずいぶん昔、二回だけお会いしたことがあった。
最初はたしか1985年前後の久留米市文化会館の控室。うろ覚えだけど、YAMAHAのポプコンの予選があって、ぼくは審査員で呼ばれていて、彼女がゲストで来ていた。それだけなら会ったというほどのこともないのだけど、学生の頃から彼女の名前だけは知っていた。友人の、そのまた友人の名として。
食うや食わずの学生時代に、西本令美子さんという短い間だったけどとても大きな影響を与えてくれた女性がいて、その人が友達の「アキノちゃん」の話をよくしていた。お人形さんみたいに内気な女の子で、でもとても才能があって、たまたま知り合いの結婚式でピアノを弾いて歌ったら、あんまりすごいので周りも驚いたけどアキノちゃん自身も驚いたと。そういう話を、聞かされていた。
で、数年後に、久留米のホールの控室で会ったわけである。
「西本君、知ってますよね」
「あの、どなたでしょうか」
「いや、友人なんですけど。今日は審査と取材と。その、いろいろ」
「はあ」
「いや、お会いできてよかったです」
などという非常に淡い出会いであったにも関わらず、その翌週には福岡の天神で待ち合わせて、一緒にカレーランチを食べた。もちろん取材なんだけど。
その時にもらった彼女のデモテープ(まだデビュー前だった)は、しばらくぼくのフェイバリットだった。ボーカルとピアノだけの、いかにもデモテープなんだけど、そのみずみずしさと才気は、たしかにちょっと比類なかった。
特に好きだったのは、『Ring Ring』という曲。
LONG LONG DISTANCE CALL AT MIDNIGHT
声はこんなに近いのに
LONG LONG DISTANCE CALL AT MIDNIGHT
会えないのがつらいね
汽車を2本も遅らせて
黙りこんでた 駅のホーム
憶えているわ あの日着てたシャツ
なんて曲だった。
あれから新居昭乃という人は、ぼくにとってずっと、デモテープの中の才気あふれる女の子であり続けたのだけれど、ある日、彼女がマクロスとかロードス島戦記などの主題歌を歌っていて、その方面ではとても活躍していることを知った。
それから時々、CDを買い、時々、聴いている。あの頃に感じた、なんだか彼女だけが周りとは別の世界の風を受けているような感じは、この頃、むしろ純化されてきているように思う。それにあの声は…。
そういえばデモテープは、どこへ行ったのだろうな。

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