2006年5月12日

映画>次郎長三国志1~9

『次郎長三国志1~9』(マキノ雅弘監督/東映1952~1954)。

とうとう観てしまった。次郎長三国志。時代劇専門チャンネルで一挙9巻放映されたのを、とりあえず録画しておいたもの。初巻を観たら、大好きな廣澤虎造が、張子の虎三なるコミカルな狂言回しの役で出ていて、その調子に聞きほれてしまった。

大衆娯楽時代活劇というべきジャンル。まあ、3年間で9本という相当な早撮りで、しかも生涯に260本も撮った伝説の早撮り巨匠マキノ雅弘が、おそらくは現場アレンジでどんどん脚本を変えながら撮りたおしたものだろうから、全巻を通したトーンの整合性なんかは全然とれていないし、そもそも全10巻あるはずのものが途中で何かあって9巻で尻切れトンボに終わってもおり、個別にみても全体でみても、映画としての完成度でいえば(賞をとるとかとらないとかの意味では)二流以下の作品なんだろう。

だが、しかし。早撮り、安撮りであったにもかかわらず、映画黄金期のファンたちは各巻の封切りを心待ちにしたにちがいない。そんな活気は画面からあふれている。

全体には、ミュージカルかと思うほど、音楽や歌がうまく使われている。民謡、新民謡、歌謡、浪曲、御詠歌、お囃子、太神楽、尾張萬歳となんでも出てきて、これも楽しい。次郎長役の小堀明男という人は、ほとんどこれ一作しかないようなのだけど、ボケっとしてて野暮ったくて、妙に笑顔が人懐こくて、いい味の次郎長だった。

マキノ雅弘という人は、最高の巨匠ではなかったかもしれないけど、その生涯の仕事の質と量を掛け合わせれば日本映画史上最大の監督ではあっただろう。なにしろ260本だ。どれだけ多くの日本人を楽しませたことか。『鴛鴦道中』などは28時間で撮ったという記録も残る。

彼の父は牧野省三、妻は轟夕起子。加東大介、沢村国太郎、長門浩之、津川雅彦、南田洋子、朝岡雪路なんて人も一族に連なる。

次郎長三国志のラインナップは、以下の通り。

『次郎長三国志第一部・次郎長売出す』(1952)
『次郎長三国志第二部・次郎長初旅』 (1953)
『次郎長三国志第三部・次郎長と石松』(1953)
『次郎長三国志第四部・勢揃い清水港』(1953)
『次郎長三国志第五部・殴込み甲州路』(1953)
『次郎長三国志第六部・旅がらす次郎長一家』(1953)
『次郎長三国志第七部・初祝い清水港』(1954)
『次郎長三国志第八部・海道一の暴れん坊』(1954)
『次郎長三国志第九部・荒神山前編』(1954)

第8部までわくわくして観ていって、最後の最後、涙と笑いと感動の大団円を期待していると、荒神山の前編で終わっており、脚本のトーンもちがうし(橋本忍らしいが)、なんだか泣きのシーンが多いわりになんで泣いているのかわからなかったりするし(後半の巻に特に多い)、泣かなくても話のつながりがわかりにくかったりもするのだが、これは早撮りで低予算であることに加えて、監督が感性のままにどんどん撮ってしまうタイプだったことが影響しているのだろう。

それでも、いいのだと思う。完成させられなかったことは惜しいけれど、映画のあの人物に会いたいと思わせるキャラクターがたくさんいるというだけでも、シリーズものとしては成功といえるのだろう。ぼくはやはり、廣澤虎造。浪曲はもちろんだけど、ちょっとした台詞のとぼけた味わいは、この人にしか出せない。

派生して『清水の次郎長』(黒鉄ヒロシ)まで注文してしまった。ついでに『坂本龍馬』と『赤兵衛』も。

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