2006年2月18日

大萩康司コンサート

15日午後6時30分。かごしま県民交流センター。

コンサートは、バッハのリュート組曲ホ短調(BVW1006/a)で始まる。6つの小品による組曲なのだけれど、2曲目が終わった頃にすでに意識がどこかへ飛んでしまっていた。「寝てる」ともいえるのだが、要するに世間のもろもろから切り離されて、夢を見てた。

ぼくは、ある種のクラシックとお能は「寝る」のがもっとも正しく幸福な鑑賞法だと思っているのだが、実際に夢を見られる演奏はそんなに多くはない。バッハはトビやすいのか、大萩康司の表現力なのか、とにかくぼくはコンサート冒頭から幸福だった。

3曲目、ガボットではっと目ざめたと思ったら、今度は音楽の抑揚に体が舞い上がっていく感覚。いきなり寝かされ、次にはどこかへ持っていかれたまま、バッハが終わる。

続いて、ヴィラ・ロボスの五つのプレリュード。例の前奏曲第一番から始まり、第五番まであるわけだけれど、生で通して聴いたのは初めて。こちらはヴィラ・ロボスだけに寝るどころではなくて、情感だの感情だのが深まったり高まったり。意図しての構成なのかどうだか、感覚を好きなように揺さぶられているような気がする。

休憩後、一転してレイ・ゲーラ、レオ・ブローウェルといった現代のキューバものが5曲。「その明くる日」で終了。アンコール一曲目は「鐘のなるキューバの風景」。アンコール二曲目、「タンゴ・アン・スカイ」を予想していたら見事に裏をかかれて「アルハンブラ」でお別れ。いい小説を読み終えたような感じで、しばらく、椅子から立てませんでしたわ。

コンサート終了後、サイン会。一人ひとりと笑顔で語り、丁寧にサインをするものだから約40分かかる。最後の一人のサインが終わった後、名刺を渡してご挨拶。雨の天文館をふらふら歩いて懐かしの「一代」にちょっと寄り、ホテルへ帰る。

翌16日、午後4時。福岡市のフォレスト・ヒルでインタビュー。こちらは前夜のコンサートの余韻が残っているものだから、インタビュアーというよりもファンの感覚に近かったかもしれない。もちろん、あまりいいことではないのだけれど、大萩康司という人の誠実な受け答えに、ますますこの人が好きになる。どんな人だって好きになるだろう。応援したくもなる。どこまでも伸びていく人というのは、みんなこういう人だ。

インタビューが終わってギターの話になり、フォレスト・ヒルの森岡氏に「おすすめの製作家はいますか」とたずねると、「丸山太郎さん」という返事。スプルース、ハカランダ、セラック仕上げのものすごく軽いギターを出してくれて、それを大萩さんが弾いてくれた。約30分間、彼はそうやってぼくの前でギターを弾き続けてくれた。

丸山ギターの話は、また書こうと思うけれど、とにかくあれから2日間、そのギターのことが頭から離れない。2日前までは「好み」とはほど遠かった音なのに、今はすっかりその抑えた叙情性が心をとらえてしまっている。それが丸山太郎の力なのか、大萩康司という演奏家が出してくれた音の力も加わっているのか、冷静に判断することもできない感じで、どうも魔法にかけられているようなのだが、この魔法、いつとけるのだろうか。とけないのだろうか。

大萩康司オフィシャルサイト
http://www.jvcmusic.co.jp/ohagi/

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コメント

ひろすけさん>

そうそう。この人のサイトで河野とハウザーの比較が書いてあったけど、
まさに丸山ギターはハウザー的な鳴り方でした。

要するに鳴らないのですね(^_^;)。響きが少なくて音の骨格の部分しか出てこないのですが、
これで弾いてもらった『月光』は、はっとするほどよかったのです。
たぶん、店頭に置いてあるだけのものを自分で試奏したら、
まっさきに外してしまうような(これまでの自分なら)ギターですが、
情感を伝えることができる奏者なら、すごい楽器になるのでしょう。

うらやましい・・・(^_^;
JUNさんの仕事で一番うらやましいところは、そういう「出会い」のチャンスが多いところです。
稀代の作家ものギターを、脂の乗り切った一流プレイヤーが目の前で弾いてくれたとあっては、僕ならばその場で轟沈します。
多分、丸山ギターや、他の作家の手工品ギターを調べまくっていると思いますが(^_^;「買いました」のお話をお待ちしております^^;

最近のお気に入りのクラギのサイトです
http://www.asahi-net.or.jp/%7Eyd9y-wtnb/index.htm
アマチュア演奏家の方ですが、登録されたMP3の楽曲数がスゴイ!演奏もかなりのものですし、メインで使われている「ハウザー3世」の音も素晴らしいです。

しんさん>

ステージにスポットが当たってギタリストが一人いるだけのコンサート、ひさしぶりでした。
面白いもので、おっと思って左手の動きに注目すると、
そこがズームアップで見えてくるのですね。
相当な集中が長時間続きました。会場全体がそんな感じで。

彼は、たまたまハバナ国際ギターコンテストでキューバに行って、そこで幾人かの音楽家に会い、
帰国してから「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」を観て、
キューバってすげえなということだったらしいです(^_^;)。

ギターのソロっていうのは良いんでしょうね。
シンフォニーなんかだと、もう、何を聴いて良いか分からなくなっちゃって、演奏者がいっぱい居るぶん、集中力も拡散しちゃうようなところが僕にはあるんですが、ギターのソロはそういうことが無さそうですね。
キューバ音楽といえば、ハウステンボスで村上龍がプロデュースして去年か一昨年くらいにコンサートあったと思います。聴いてみたかったけどあまりに遠し(^^;)。

魔法を解く呪文を知ってます。「買います」です(^^;)。

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