いけ、杉浦。
ひさしぶりにプロレスの話。
新日本が液状化現象よりも深刻な地盤沈下を起こし、あれを観るくらいなら大相撲の巡業を観た方がずっと幸せになれるというくらい、ひどい状態になっていることから、「プロレスの終焉」をいわれているけれど、ノアをみていると全然そんなことはない。あれは新日が一人で沈下しているのだ。
理由は会社が悪いのでも世代交代が進んでいないのでも、長州現場監督が悪いのでもなくて、エースを張れる選手がいないのだ。ノアのエースといえば小橋健太だけど、あれもまあ、たび重なる怪我もあって絶対エースとはいえないにしても、それを支える準エース級として三沢光晴と秋山準がいる。この二人は、どんな状況になってもちゃんと「プロレス」をみせてくれるし、田上明という休火山キャラも健在だ。
新日本は準エースすら不在。蝶野正洋、天山広吉、永田裕志、中西学が一応トップ級。それに次ぐポジションに棚橋弘至、中邑真輔がいるけれど、こいつらはどう組み合わせてもなかなかプロレスにならない。一人ひとりの素質や技術は、むしろノア勢よりも上回っているほどなのに、なぜあんなにも試合がつまらないのか不思議だ。最近は客席がどん引きなのが、テレビの画面でもわかる。
ノアのリングにある「どう転んでも面白くはなる」「だってあの誠実な三沢が仕切ってるんだから」という安心感がまったくないのだ。毎日毎日、いきあたりばったりで、選手たちはどう試合を終わらそうか、どうやって物語をつむげばいいのかと悩んでいるようにすらみえる。
もうひとつ、かつて世界一面白かった新日のジュニア勢が元気がない。いまだにライガーと金本浩二がトップなのだから、どうにもならない。唯一の救いは邪道&外道だけど、彼らも職人としての魅力であって、客を引っぱるほどの華はない。
一方、ノアのジュニアは、あいかわらずのテンションの高さを保ち続けていて、ヘビー級が全員風邪をひいて休んでも、なんとかするのではないかと思われるほど。そんなノアのジュニア選手で最強は、杉浦貴だ(体重は100kgあるが)。戦車のような頑丈な体をして、KENTAの膝蹴りだろうが丸藤正道の不知火だろうが金丸義信の垂直落下だろうが、なんのケレンもなく毎日受けまくって、びくともしない。彼がいて毎日相手よりも質量ともに技を受けてくれるからこそ、ジュニアが光っているともいえる。杉浦貴こそ、ノアジュニアのキーストーンなのだ。
その杉浦が、どういうわけかパンクラスのヘビー級トーナメントへ出場することになった。いくらレスリング出身とはいえ、プロレスラーが瞬間で勝負が決まってしまう総合の試合に出るのは大変リスキーで、時に目を覆うような結果を招くわけだけれど、あいつの試合なら何をおいても観たいと思う。
相手は極真出身の野地竜太。強いけどアマチュアだ。いやプロ選手なんだけど、杉浦と同じ意味ではプロではない。結果はどうでもいいけれど、あいつが全開になるシーンがあればいいと思う。ほんとうはプロレス的な文法の上でも全開になってほしいのだけれど、相手がいないのだ。キャバクラ好きのおとぼけキャラをやめて、がちがちのストロングスタイルでやれる相手がいるといいのだけどなあ。

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