スピーカーマトリクス考(1)
プロジェクターの導入は、わがオーディオ人生にとってひとつの革命となったのだった。そうだった。
一言でいうと、もうピュアオーディオはおまけ。これからはAVだ。なのである。実際、大画面でよくできた映像を見た後にピュアオーディオを聴いても、もちろんそれはそれでいいのだけれど、焼肉の後のお茶漬けといった感じがする。やはり目から入ってくる情報量は圧倒的だ。
そこで次にはクオリティアップという話になる。この世界もオーディオと同じく、きりがないのだけれど、とりあえず画像的にはHDMI接続によるDVD視聴から始めることになるだろう。現在の525プログレッシブが、720プログレッシブになるわけで、単純にいって画面の密度は4割近くアップ。これがどのくらいの効果をもたらすのかやってみないとわからないけれど、機器を買えばすむ話なので、簡単といえば簡単だ。
そして音。これはちょっとやっかいだ。現代のAVの標準である5.1chを実現するためには、AVアンプのほかに、5本のスピーカーと1本のウーハーが必要になる。この5本のスピーカーは、まったく同じものであることが理想だけれど、設置の面でなかなかむずかしい。それでも少なくとも振動版の素材くらいは揃える必要がある。
普通に売っているサラウンドセットと称するものは、フロント2本、センター1本、リア2本が、振動板の材質や箱の形式がばらばらで、あんなもので良い音がするわけはない。と、長岡鉄男もいっていた。能率の違いはAVアンプで揃えればいいとはいっても、位相はどうにもならない。サラウンド効果は、主に位相差が作るわけだから、ここを無視してはろくなものにならないはずなのに、ほとんどがそういう製品だというのは、どういうわけなのだろう。
また、AVアンプの音質にも疑問がある。現在使っている金田アンプに匹敵するだけの音を出せるAVアンプがあるのだろうか。あったとして、無理なく買える値段なのだろうかと考えると、これもかなりむずかしそうだ。少なくとも50万以上のクラスにはなるだろう。お金の使い方としては、あまり賢いとはいえない。趣味だから賢い必要はないにしても、ちと現実的ではない。
そこで、5.1chは先送りにするとして、とりあえず長岡鉄男流にスピーカーマトリクスでいくことにした。これなら、現用のスーパースワンをそのまま使いながら、リアスピーカーを2本追加すればよい。ウーハーはいらないのかというと、もともとスーパースワンは50hzまでは十分なレベルで出ているはずなので、まあ目をつぶることにする。大体、スワンと同じくらいの能率で50hz以下を再生するスーパーウーハーは、相当大型のものになってしまうし、簡単には作れそうにない。また、センタースピーカーは、なかなか置き場が見つからない。
スーパースワンをAVのフロントに使う利点はほかにもある。ぼくの部屋に限った話だが、投射面の白壁に干渉しないぎりぎりの高さであるため、壁の面積をそのまま使えるのだ。ネッシー族のような超トールボーイスピーカーだと、箱の幅の分だけ投射面が狭くなってしまう。これは大問題だ。
そんなわけで、AV対応オーディオの第一歩としては、ピュアオーディオ用のスーパースワンと金田アンプをそのまま使い、リアを2本追加するだけのマトリクス再生に基本路線を決定。これだと、AVアンプを買わなくてすむし、各種プロセッサーを通さないめ、音質の犠牲もゼロですむ。音そのものの鮮度は、これが一番いいはずだ。間にはさむものがなんにもないのだから。

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