あぶりがっこを作ること
仕事が一段落してぽけっとしていたので、こないだアウトドアショップのバーゲンで買ったスモーカー(1000円なり!)をひっぱりだしてきた。
燻製を作るというのは実に13年ぶり。なんで覚えているかというと、雑誌の仕事で【ベランダで作るローコスト燻製の達人】のような人に会い、すっかり感化されてしまって、何度か挑戦したことがあったのだった。
でも、燻製を作るのに一番大切なことは気長にのんびりやるということであって、あれから結婚したり独立したりして、やっぱり忙しかったんだろう。燻製づくりのことなど、すっかり忘れていた。
燻製はいろんな雑誌の定番記事にもなってきて、もう読み飽きたということもあり、読み飽きるくらいだから作る気もしないということもある。
誰だって、みんなやってるものを、わざわざやろうとは思わない。自分も書いておいて無責任だけれど、14年前ならまだちっとは価値もあったぞ。
そんなわけで、隣のスーパーに行って、タクワン、卵、豚のもも肉かたまり、地鶏のもも肉、ウインナー、ゆでだこを買ってきて仕込んだ。材料を見ればわかるように「とりあえず試しに」というラインナップであって、特に手のかかるものはない。
豚と地鶏は、塩とコショーとオールスパイスをすりこんで、刻んだセロリ、ニンジンで覆い、ラップにまいて冷蔵庫でなじませておいた。
スモーカーにヒッコリーチップをセットして、適当に煙が出てくればあとの2時間、することもない。することもないのに離れられないのが燻製というものであって、しょうがないのでガスレンジの前に座り込んで、煙草を喫いつつ、1本580円なりのカルロ・ロッシの赤ワインを飲む。うまいじゃないか、このワイン。
そばに寄ってきた子供と話をしたり、ちょっと椅子を離れて高校野球の様子を見に行ったりして、その間もどんどん飲み続け、すっかりいい気分になった頃、燻製はできあがった。
出色だったのはタマゴとタクワン。宮崎は全国の漬物大根の8割だか9割だかの産地であって、もともとタクワンのレベルの高いところだけれど、これをスモークした「あぶりがっこ」は、相当なものになった。
どこか寒い国で、手仕事をやりながら、かあちゃんとだべりながら、冬の大半を過ごす囲炉裏端の天井で煙にいぶされてできる「あぶりがっこ」は、うまいのまずいのを超えたものであるにちがいないので、こんな軽薄な過程のもとに出来上がってしまったものの味を云々するのは気がひける。
でも、うまかった。

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