釣にいきてー、のこと
その昔、とある地方雑誌の編集室にいた頃。
夜の1時かそこらの時刻、すっかり煮詰まってしまって、時間はないし取材は足りてないし、資料を集めることもできないしという状況の中で、ぐおおおおおとうなりながら原稿を書いていたら、たまたま後ろを通りかかった上司に頭をどやされた。原稿用紙の端っこに、「釣りにいきてー」と書いてあったのだった。
なるほど、おれは追いつめられると釣りに行きたい人間なのかと、その時初めて気づいたのだけれど、これは今でも続いていて、考えごとをしたままで、どぶんとお風呂に入ったと同時に「釣りにいきてー」だったり、仕事が遅れているのに今日も一字も書けず、飲みに行った先のカウンターで「釣りにいきてー」だったりするのだ。
時々、これに「みんなでさあ」がついたりもする。
「みんなでさあ」
「釣りにいきてーよなー」
なのである。
みんなが誰と誰かは考えたこともないし、どこに行って何を釣りたいということもない。
とにかくそうつぶやくことで、楽になろうとする。
もしかして、つらい時に、
「釣りにいきてー」
とつぶやくの、私一人でしょうか。

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